引越しコラム column

引越しで違う幼稚園へ 子どもは環境にすぐ慣れる?


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小さいお子さんのいる家庭にとって、引越しは多くの不安がつきまとうものです。特にその引越しが転園を伴うとすれば、なおさらのこと。新しい園にスムーズに慣れることができるかどうかは、引越し前からの親の働きかけにかかっています。「ただでさえ引越し準備で忙しいのに、そんな時間は取れない!」という声も聞こえてきそうですが、大丈夫。いっしょにお風呂に入りながら、夕食の支度をしながら、園からの帰り道などのちょっとした時間に親子の対話を意識的に持つことで、新生活への不安は期待に変えてあげることができるのです。ぜひお子さんの心に「魔法」をかけてあげましょう!

 

1.引越しについて「具体的に」「ポジティブに」伝える

この年齢の子にとって、経験したことのない未来について想像することは難しいことです。新しい家について伝える時は、写真や間取り図などを見せながら「素敵なおうちだね」「ここにあなたの机を置こうか」など、子どもが引越しそのものを楽しみにできるように具体的に話しましょう。

可能ならば実際に新しい家を見に行く、近所を散歩する、近くの公園で遊ぶなどのことができればいいですね。特に公園では同じ園に通うお友達を見つけることができるかもしれません。大きなお子さんなら近所の地図を見ながら「ここに公園があるね」「この幼稚園に通うんだよ」と話すのも興味を持つきっかけになります。

また引越す時期について伝える際、カレンダーを理解できない年齢の場合は「あと○回寝たら」「今は寒いけど、暖かくなったら」などの言い回しを使うとよいでしょう。

親にとって意に沿わない引越しの場合もあるかと思いますが、そこはぐっと飲み込んで。「お母さんも楽しみだな」と、とにかく新しい生活にいいイメージを持たせることに徹しましょう。

 

2.事前に本人を連れて園へ行く

事前に願書の提出などで園を訪れる機会があれば、ぜひ本人を連れて行きましょう。小さな子にとって「初めての場所」と「一度行ったことのある場所」の違いは、大人が思う以上に大きいものです。また先生が子どもにどう接するか、それに対してその子がどう反応するかを観察することもできます。

園庭の遊具、園での活動や行事の中に本人の興味を惹くものがあればしめたもの。「新しい幼稚園に行ったら○○で遊べるね」「○○ができるんだって、楽しみだね」「優しい先生だったね」などと新しい園に関するポジティブな言葉を、転園まで繰り返しかけましょう。その度に、子どもの心に新しい園に対するよいイメージが湧き起こります。

事前に園へ連れて行くことが無理ならば、休日に車で前を通って「ここに通うんだよ」と教えたり、HPやパンフレットで写真を見せたりと、少しでも新しい園を身近に感じられるようにしてあげましょう。

 

3. 不安を受け止めた上で、いいイメージを足してあげる

引越しと転園を伝えれば、子どもの心は大きく揺れ動きます。慣れ親しんだお友達や先生との別れ、新しい環境。親に不安を訴えることもあるでしょう。そんな時「大丈夫、すぐに慣れるよ」と簡単に言ってしまいがちですが、そこは子どもの言葉を「そうだね、寂しいよね」とそのまま受け止めてあげましょう。

そのうえで「新しい幼稚園にも○○ちゃんと同じくらい仲良しになれる子がいるかもね」「新しい幼稚園でも○○が流行ってるかな」と、本人が具体的にイメージできる「いいこと」「今の園との共通点」についても話します。「入園前は不安がっていたのに、すぐにお友達ができた」など、本人の入園時のエピソードを話してあげるのもいいですね。

そしていちばん大切なのは、「私たちがついているから大丈夫」と家族が見守っていることを伝えることです。住む家と通う園が変わることは、子どもにとっては世界のすべてが変わり、失われてしまうような印象を与えるかもしれません。引越しても家族はいっしょにいられるよ、変わらずそばにいるよ、と伝えて安心させてあげましょう。

 

4. 親が新しい園に慣れた姿を見せる

新しい園に通い始めた後も、まだできることはあります。それは親が先に園に慣れ、その姿を子どもに見せることです。見せかけでも構いません。「行っておいで!」と我が子の背中を押すのではなく、「お母さんはもうこの園に慣れたよ、あなたもおいでよ」と手を引いて連れて来るくらいのイメージで。

とはいえ、知らないお母さんたちの集団に入っていくのはかなり勇気のいることです。でも先生ならどうでしょう。きっと転園してきた親子のことを気にかけてくれているはずです。まずは挨拶から、先生と親がコミュニケーションを取っている姿を積極的に見せましょう。送り迎えや電話などで先生と話す機会があれば、「先生が○○って言ってたよ」と本人に伝えて、「お母さんと先生は仲良し」だと思わせましょう。

 

5. 転園=入園だと考えよう

ここまで転園前後に親ができることについて述べましたが、いくら親が努力しても新しい園になかなか慣れてくれない、毎朝泣きながら登園して、いったいいつになったら泣かずに行ってくれるんだろう、前の園には楽しく通えていたのに…。そんな場合もあるかもしれません。

そんな時は入園時のことを思い出してみましょう。お子さんは、周りのお友達はどうでしたか?「泣きながらバスに乗るが、降りる頃には笑っているらしい」「泣きながらでもお弁当は食べていた」「4月に泣きながら登園していたことを、秋に『昔は泣いてたけど』と自分で話す」どれも入園あるあるですよね。以前の楽しい幼稚園生活が頭にあるとどうしても比べてしまいますが、もう一度入園した時の気持ちに戻って、ゆったりした気持ちで応援してあげましょう。

また「仲良しのお友達ができない」というのも親が心配しがちな点ですが、この年齢の友人関係はかなり流動的なもの。特に3、4才はまだまだひとり遊びも多い時期です。親が気にしているほど本人は気にしていない場合もあるので、「幼稚園=友達と遊ぶ」と親が思い込まずに、大きなトラブルなく園生活が送れていればよしとしましょう。

大切なのは、新しい園に対するポジティブなイメージを親が発信し続けることです。新しい環境に飛び込むのは、大人でも大きなストレスを感じるもの。親はいつでも我が子のいちばんのサポーターでいてあげたいものですね。