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16/04/11 引越しコラム column

引越しと言葉、子供時代の名古屋弁ショック!

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京都から名古屋へ

私が京都から名古屋に引越したのは、七才のときでした。七才というと、小学一年生で、いろいろなこともわかりはじめ、言葉の語彙も増えて、複雑なニュアンスも表現できるようになります。

私の両親は二人とも京都生まれの京都育ちでしたから、家の中では当然京都弁。家の外も京都弁だったので、私は七才まで、京都弁べったりの世界の中で育ち、自分も知らない間に京都弁で喋っていました。

それが、七才のとき、突然、名古屋というまったくの異空間に放りこまれて、名古屋弁という、それまでの自分にとってはまったく宇宙語?といってもいいような、ふしぎな言葉の渦の中に巻きこまれてしまいました。

そのとき、私の頭は混乱したのか……おそらく、カルチャーショックはあったのだと思います。自分では、そのときのことはなぜかはっきりとは覚えていないのですが、ただ、引越してから奇声を発したりという奇矯な行動が多くなって親に迷惑をかけたのは覚えています。

それは、それまでののんびりした生活が、突然まちなかの暮らしに変わったという環境の変化も大きかったのですが、また、名古屋弁という異空間の中に突如放りこまれてしまったということも影響していたのかもしれません。

 

ネコの鳴き声のような……

名古屋では、「おみゃー」という、なにかネコの鳴き声を連想させる言葉がよく使われます。これは、たぶん「お前」の訛ったもので、名古屋の人は、「you」という意味でしょっちゅう使う。ときに「さん」が着いて「おみゃーさん」になったりします。

慣れてくると、親しい間柄で使われる親愛感のこもった二人称だということがわかるのですが、これをはじめて聞く人には、かなりのショックになるようです。「おみゃーさんがよー」とか、とくに大きな声で言われると、なにか怒られているみたいにも感じるのです。最近の名古屋ではお年寄りしか使わない言葉ですが、私が子供の頃は今より一般的でした。

当時は私の母にはけっこうストレスになったみたいですが、私自身が、この言葉を学校で覚えてきて、うちで使うようになったときは、相当ショックを受けたようでした。それまで、京都弁という共通語で話していた家の中の会話に、突然、見知らぬ異国?のショッキングな言葉が入りこんでくる……私自身は、意識下では相当のストレスもあったのかもしれませんが、両親よりはこのふしぎな?言葉に慣れるのは早かったようです。

しかし両親、とくに母親はずっとなじめず、その母の心が私にもよく伝わって、私自身母には、自分が名古屋弁で喋っているシーンをできるだけ見せないように……とこどもながらに気を使っていたように記憶しています。

 

アクセント・バイリンガル

これは後にいろんな本を読むようになってわかったのですが、京都と名古屋の間には、日本列島全体を二分するような、大きな方言分界線があるようです。いわゆる「関西アクセント」と「関東アクセント」の境界線ですが、これがために、関西では虫のクモを表わす発音が、関東では空のクモを表わす発音になったりします。高低アクセントが逆転するという現象ですが、この逆転が、どうも京都と名古屋の間で起こるらしいです。

より詳細にいえば、滋賀県の米原では関西アクセントですが、関ヶ原を越えて岐阜県の大垣に来るともう関東アクセントになる。すごく狭い地域でアクセントの逆転が起こります。ちなみに、三重県は関西アクセントなので、南の方ではおそらく木曽川を境にこの逆転が起こっているようです。

私は、七才の頃に、まったく知らずにこのアクセント境界を越えて関東アクセントの地域に入りこんでしまったので、家で言う「クモ」と外で言う「クモ」のアクセントが、自分でも知らずに完全に逆転していたのでした。そういう意味では、私にとって、「アクセント境界」は自分の家の内外の境にあったということで、「アクセント・バイリンガル」に、知らない間になってしまっていたのでした。

 

アクセントと年齢

この使い分けは、まったく意識することなく自然にそうなっていったようです。私の三才下の妹も同じなので、この現象は、こういう状況下におかれた子供が自然に取る、いわば自衛本能のなせるわざなのかもしれません。

しかし両親はこういう器用なことができず、父も母も、家でも外でもずっと関西アクセントのままでした。

子供は適応能力が高いといってしまえばそれまでですが、では、このバイリンガル状態になれるのは何才くらいまでなのか……うちの子は、名古屋で生まれ、名古屋で育ち、母親も関東アクセントだったので、幼稚園のときから関東アクセントでした。18才で京都の大学に進学し、そのまま京都で就職したのですが、仕事先でも友人と話すときでも、基本はずっと関東アクセントで通しているようです。

この状態を見ると、言葉のアクセントは、18才までには固定するのかなと思います。実際には、細かなところでその土地その地域の言葉に対応していきますが、アクセントという、いわば発音の根幹になる部分は、かなり小さな頃にまわりの言葉に影響されて固まってしまうのだなあと思いました。

 

引越しが言葉に与える影響については、いろんな人の体験を聞いてみるとおもしろいのではないでしょうか。

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