引越しコラム column

引越しによる環境変化のストレス 私の奇妙な行動


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引越しを控えられている方で、お子さんをお持ちのかた、たくさんいらっしゃることでしょう。
そんな方で、お子さんが環境の変化にうまく順応していくことができるかどうか、心配な方もきっといらっしゃいますよね。

お子さんによっては環境の変化によるストレスを強く感じる方もいると思います。
一口に引越しといっても、環境があまりにも違う土地への引越しの方が、順応する時間もかかるでしょう。

今回は、小さい頃引越しによるストレスから、奇妙な行動を起こした記憶のあるKさんの体験談を交えて、あまりにも大きな環境の変化が起こしうる子供のストレスにスポットライトを当ててみていきたいと思います。そして、親御さんがしてあげられることについてもお話します。

 

環境が違いすぎる土地へ引越し

Kさんは子供時代に、まわりが自然に恵まれた土地から、当時から大きな繁華街であった名古屋の栄に引越しました。
あまりにも環境が違いますよね。

–「私は、当時七才で、京都から名古屋に引越しました。京都にいたころは、まわりは住宅街で、毎日下鴨神社の広大な森で遊び、
夕方には犬を連れて鴨川のほとりを散歩するという、自然に恵まれた暮らしでしたが、名古屋に引越して、それがガラッと変わりました。

なにが変わったかといいますと、まず、自然がない!名古屋の引越し先は、町なかも町なか、当時いちばんの繁華街であった栄(さかえ)のどまんなかで、まわりを見れば家やビルばかり…。といっても、もう半世紀以上前なので、名古屋の繁華街のどまんなかでもまだ道路は未舗装で、たまに車が通ると赤土の砂ぼこりが立つような状態でしたが。それでも、うちは、栄の三つの百貨店、丸栄、オリエンタル中村(現在の三越)、松坂屋からちょうど等距離にあり、自然がまわりにはとても少なかったのです。

公園なんかはありましたが、京都にいたときの、あの広大な神社の森や鴨川の広い河原…。それに比べると、
自然はほぼないといっていい。それと、京都ではどこからも山が見えましたが、名古屋の街のまんなかからはどこにも山が見えない。
なにか、街という名の砂漠に放りだされたような印象もありました。」–

当時のKさんは、自然がないことがとてもストレスになっていたようでした。引越す前は自然の中で遊ぶことがKさんにとっての遊び方だったのに、いきなり都会の中心に投げ込まれた…。環境の変化を経験する上で、あまりにも全てのことが一気に変わってしまったことにひどく戸惑ってしまったようです。

 

ストレスで奇妙な行動へ

Kさんは、この大きな環境の変化のストレスから、当時小学校で奇妙な行動を取り始めたです。

–「自分ではあまり自覚していませんでしたが、この環境の変化は、私にとってかなりのストレスになったんじゃないかと思います。
転入した小学校では、かなり問題行動もあったようです。
たとえば、教室で急に服を脱ぎはじめたり、奇声を発したりして、親が学校に呼ばれることもよくありました。
またある時、校庭での校長先生のお話のときで、校長先生は、防火のことを話しておられ、最後に、「みなさんの家の近くで火が出たら、笑う人はいないでしょう」とおっしゃった。
そこで私はサッと手を上げ、大きな声で「笑います!」と宣言したのです。全校生徒の前で…。もうみんなビックリして静まり返っていました。
ところが、それから少したって、ホントに私の家の向いが火事になりました。道を挟んで向かいの家が全焼したんですが、その炎を見て、私は校長先生との約束を思いだして、ムリに笑おうとしたのです。
しかし、なにか引きつったような声しか出てきませんでした。これはよく覚えています。

今振り返りっても、当時の私の行動は不可解なままです。当時は子供だったので自分では何がおかしいのかもわかりませんでしたし、ストレスに感じていたことも無自覚だったかもしれません。やっぱり、あまりにも環境のちがうところへ引越したストレスは、かなり大きかったのでしょう。」–

引越しは、あまりにも一気に全ての環境が変わってしまうものなので、お子さんの精神的なケアには注意したいものです。
引越しによって近所の風景が変わる、仲の良い友達と離れ離れになる、学校のお友達も変わる、家も変わる…。Kさんの体験談は少し極端な例だったと思いますが、子供というものは繊細であり、自分では原因を自覚したり、対策を練ったり、ということはできません。

親御さんが子供の状態に目を配り、注意深く見守っていく必要があります。環境の変化は人生につきものです。
ですが、Kさんのようにあまりにも環境が違うところへ引越す場合は、親御さんに少し意識してほしいことがあります。

例えば、自然の中で遊ぶのが日常になっている子供であれば、都心の中でも少しでも似た環境がある場所を検討してみるべきかもしれませんし、また引越し先エリアで、近郊の自然が豊かな場所を調べておき、休日など連れて行かれる時には積極的に連れていく、などの配慮もできます。
子供は素直ですので大人よりも順応する能力が高い場合もありますが、急な大きい変化が時には心身ともついていけない場合があるかもしれません。

引越しの直後は子供の状態をいつも以上に観察し、お話をよくしてあげ、ストレスを感じているようであれば親御さんが出来る範囲で対策を考えてあげるべきです。

それと同時に、新しい土地に関するできる限り正確な情報を家族が集め、どのような毎日になるのかについての説明をしっかりと、わかりやすくしてあげましょう。お子さんが事前にイメージをしておく、ということでも、急な変化に対するストレスの軽減につながります。

 
いかがでしたか?

今回は子供時代に引越しによってあまりにも環境の違う場所へ引越しを経験したKさんの体験談をご紹介しました。

あまりにも大きい変化は、時にはお子さんに大きなストレスを与えるかもしれません。引越し後しばらくはお子さんが精神的ストレスをためていないかを親御さんがお子さんを注意深く観察する必要があります。

そして引越し後は、お子さんが前の土地で好んでいた環境を、新しい土地で少しでも再現できる場所、機会をみつけてあげることも少し頭に置いておいてください。

そして、事前に、新しい環境ではどのような生活になるか、ということをお子さんがイメージしやすいようにしっかり説明しておく、ということもとても大切なことです。お子さんが新しい環境に順応する手助けになります。

もちろん、子どもには繊細な子、ストレスに強い子、性格も十人十色です。引越しの前後はお子さんのことをいつも以上に観察してあげることがなによりも大切なことだとです。