引越しコラム column

【国立・公立・私立】小学校の選び方と引越し


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現在、お子さんが幼稚園で、そのまま地元の公立小学校に通わせるかどうか悩んでいる方、また現在の学区の小学校があまり評判がよくないため、隣の学区に引っ越そうかと考えている方、そんな方もきっとたくさんいらっしゃるでしょう。

小学生の6年の間にどんな環境でどのような友人と過ごすかによって、その後の人生、生き方、考え方を大きく変えると言っても過言ではないと思います。

私自身、親の転勤によって小学校を4つ変わりました。しかもすべて別の県への転校でした。学校は4校とも公立小学校でしたが、子供ながらに学校のレベルがかなり違うということを感じました。

そんな私自身の体験も踏まえつつ、今回は小学校選びと引越しについてご紹介いたします。

 

 

小学校の種類と特徴

小学校の種類は大きく分けて3つあります。

  • 国が設置・運営する国立小学校
  • 市区町村などの各地方自治体が設置・運営する公立小学校
  • 民間の学校法人が設置・運営する私立小学校

の以上です。それではそれぞれの小学校についての特徴を見ていきましょう。

 

国立小学校

国立小学校は、国立大学の教育学部などの教員を養成するような学部に附属して設置されている場合がほとんどです。国立の小学校は文部科学省の管轄下にあるため、教育要綱に関する新しい試みなどがよく行なわれます。

 

■特徴

国立小学校には、ごく普通のサラリーマン家庭の子供もいれば社会的地位の高い家庭の子供もいます。小学校に通わせるために近くに引っ越してくる家庭もあれば、片道1時間以上かけて通ってくる子供もいるそうです。

国立小学校は広範囲から様々なタイプの子供が集まっていると言われていますが、それは国立小学校が研究校という面から、団体生活を通して子供がどのように成長するかという成長過程のデータを取る意味があると考えられています。

また、国立小学校の中には通学距離範囲を制限しているところもあり、学校によって「片道1時間以内」とか、またある学校では「東京都内の指定された区域に保護者と同居し、通学時間は40分以内」などという時間だけではなく区域の制約のある学校もあります。つまり、どこでもだれでも受験できるというわけではありません。したがって通学範囲外だった場合には引っ越しの必要も出てくるでしょう。

 

■国立小学校のメリットとデメリット

国立小学校は国立大学の教育学部付属という場合がほとんどなので、そのような小学校は教育実習生が多く、年間の4分の1もの日数で大学生を受け入れている小学校もあります。それは他の学校で教育実習生が受け持つ授業時間よりもはるかに多いということです。

また国立小学校は、実験的な授業により最新の授業を受けることができるという点はいいのですが、教育実習生の受け持つ時間も多いため、十分な授業を行えない場合もあります
ですので、中学受験を目指すお子さんには不向きかもしれません。実際その旨を謳っている学校もあります。

そのような国立小学校の特徴については、事前の学校説明会などで説明されますし、入学願書と一緒に配布される学校紹介などでもたいていそのことに関しては明記されています。

しかし、実際に入学してから「実験的方式の授業に納得できない」とか、「思っていたイメージと違う」ということで他校へ転校する子供もいるようですので、国立小学校のそういった方針に少しでも違和感がある場合は、国立小学校を選ぶのはやめておいた方が無難です。

 

■国立小学校受験について

国立小学校の受験についても少し説明しましょう。私立の学校ですと受験のパターンがわかりやすいので、試験や面接の内容を予想して準備しやすいと言われていますが、国立小学校は受験の予想がしにくいとされています。小学校受験の塾に行くなら国立向けのコースを選択した方がベターです。

また、国立小学校の受験には抽選があります。抽選がどのタイミングで行なわれるかは学校によって違ってきます。初めに抽選のある学校では、事前に行なわれる抽選に外れるとテストを受けることすらできません。後からの抽選の場合には、テストに合格しても抽選に外れると入学することはできません。中にはテスト前(1次試験)とテスト後(3次試験)に2回の抽選があるという学校もあるようです。

いずれにしても、国立の小学校を受験しようと思ったら、十分に検討し、事前にしっかりと調べておく必要があるでしょう。

 

公立小学校

公立小学校は市区町村に設置されています。文部科学省が定める学校教育法第38条には

「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」

となっており、基本的には、住んでいる学区により入学する学校が指定されることになっています。 ですから隣の学校がいいからと言って勝手に他の学校に通うことはできません。

 

■特徴

公立小学校の一番のメリットは、近所の友人と同じ学校に通えるということです。友人の家を行き来したり、一緒に勉強を教え合うということも頻繁にできます。また町内会・子供会などの地域イベントも学区ごとで行われることが多いため、そういった地域のイベントにも参加しやすくなります。

スポーツなどに取り組みたいと考えているのであれば、公立小学校の方が様々なスポーツ大会などには参加しやすいということもあります。

しかし公立小学校はどこの学区の学校かによって教育レベルに大きな差があります。同じ県内、市内であっても、学区によっての差はかなり大きいのです。また、レベルの高い小学校にはわざわざその学区に引っ越してきてまでその小学校に入学させるという家庭も少なくありません。そのためか、教育レベルの高い学区は、高級住宅街や古くからのお屋敷街であったり、新興マンションにしても他に比べてかなり高め…ということも多いようです。

そしてさらに、人気のある学区は「ここの小学校に入れたいので学区内に引っ越したい」という家庭も多く、子供がまだ保育園のうちから物件を探しているが、なかなか物件が見つからない、という話もよく耳にします。もしも教育レベルの高い公立小学校に通わせたいと考えているのであれば、早めに引っ越しの準備をした方がいいかもしれません。

 

■公立小学校を選ぶ場合に考えておきたいこと

「小学校は地元のお友達とのびのびと楽しく過ごしてもらいたいから公立の小学校」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし公立小学校こそ学区によって学力レベルも雰囲気も全然違うのです。

学力レベルの高い公立小学校には、レベルの高い子供が集まってきます。そこの小学校に入学させるために子供が幼稚園や保育園のうちに学区内に引っ越してくるような家庭も多くみられます。

希望する学校が系列の小学校はなく中学校からであった場合、小学校は私立ではなくレベルの高い公立小学校に通わせ、中学から私立の学校に通わせるというケースも多くあります。

学力レベルの高い公立小学校の場合、クラスの半分以上が私立の中学に進学するということも珍しくありません。
「うちは平凡な家庭だから普通に公立小学校に」なんて考えている家庭が、もしも知らずにレベルの高い学区に引っ越してきてしまったらどうなるでしょうか?「小学校から塾なんて全く考えてなかった」のがクラスの他の子供たちに合わせるために塾通いも必要になってくるかもしれません。

また中学受験のために、「小学校低学年か3~4年くらいまでにレベルの高い小学校に転校をすればいい…」という考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、もしもそれほどレベルの高くない小学校からの転校の場合、前の学校では常に学年トップだったのに、転校先のレベルの高い小学校に来たら真ん中より下の方…ということもあり、お子様のやる気の問題にもつながります。
中学受験を考えていて、小学校はレベルの高い公立小学校と考えていらっしゃる方は、できれば早めの引っ越しをおすすめします。

 

私立小学校

私立小学校は各学校法人によって設置・運営されており、高等学校や大学・短期大学に付属しているところも多くみられます。もとになる教育理念などは様々で、キリスト教や仏教などの宗教の教えを軸としている学校などもあります。幼稚園から中学校、高校、大学まで系列校をもっているところもあります。

 

■特徴

私立小学校は文部科学省の枠より自由なので、学校によってそれぞれの特徴が出せます。授業の進め方にしても、英語・算数・国語などそれぞれ専門の先生が授業を教える、「教科担任制」をとっている学校が多く、これは公立小学校との授業の大きな違いといえます。

私立小学校には大きく分けて2つのタイプがあります。まず一つ目のタイプとしては大学の付属校であったり系列校を持っており、進学先がある程度決まっている学校です。系列の中学や高校へは、無試験で進学できたり、成績や内部試験の結果などによって進学できる場合がほとんどです。大学や短期大学までいわゆる「エスカレーター式」に進学できる学校もあります。系列の中学校や高校を複数もっている学校もあります。

二つ目のタイプとしては「進学校タイプ」の小学校です。これは難関の中学校を受験するための学校と言ってもいいでしょう。基本的には系列の中学校は持たずに、通っている児童のほとんどが中学受験に臨みます。中学受験に対してのデータも多数持っており、成績だけでなく子どものタイプからも中学校選びの助言を得ることができる場合も少なくありません。

また同じ学校法人内に系列の上位校があっても、ほとんどの卒業生が他の中学校を受験して進学するという学校もあり、それらの学校もこのグループに分類することができます。
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校風、教育理念で考慮すべき点とその理由

校風や教育理念 は設立の目的、設立者の理念などによって異なっています。
また特定の宗教教育を行っている学校、男子校か女子高校か共学なのか、といったところにも設立者の教育理念などが反映していると言えます。続いてはそれらについてみていきましょう。

 

■宗教の有無について

教会や寺社が設置する幼稚園が多いのと同じ理由で、宗教法人が小学校を設置することは大変ポピュラーとなっています。宗教法人が真の意味で宗教教育をしようと考えた時に、教育のどの課程で宗教教育するのが一番効果的なのか…、それはやはり、個人の性格や人格が形成される基礎的な時期でもある初等教育の段階で宗教教育を受けるのが最も有益となります。キリスト教の教えや仏教の教えなど、宗教に基づいた価値観を日々の生活の中で学んでいくということは、非常に価値のあることだと思います。

しかし、家庭と学校との考え方や価値観が異なる場合は、子どもにとって日々の生活は混乱を生み出し、最悪の場合にはそれが子供にとっての苦痛に変わっていく可能性もあります。

無宗教に分類される私立小学校も、それぞれに設立の目的があり、理想とする教育を追求しているわけですから、言ってみれば私立小学校は全てが宗教校と言っても過言ではないかもしれません。いわゆる「宗教校」ではない学校の中には独自の教育を掲げる学校はたくさんありますので、この学校独自の教育理念を理解せずに入学することは小学校にとっても、家庭にとっても幸せなことではありません。

それぞれの小学校が教育で目指す価値観とそれぞれの家庭の価値観、この価値観のすり合わせが小学校選びの一つの重要なポイントになるのではないでしょうか?

 

■男子校/女子校/共学

私立小学校に入学すると、小学校から高校までの12年間、大学附属だと最大で16年間通うケースも考えられます。小学校から大学まで女子校に通う場合、小学校入学から大学卒業までの16年間、教室で男子と机を並べることは無いということになります。

小学校から男子だけの私立小学校は、首都圏にはわずかに2校(暁星小学校と立教小学校)ですが、暁星は高校までの12年間、立教も大学は共学なので同じく12年間の男子校生活です。
大学の無い女子校も同じように12年間女子だけで過すケースが多いのですが、中学以降が女子校でも小学校が共学と言うケースもあります。

中学以降が女子校の場合、これらの小学校に入学する男子児童は進学できる中学が無いため中学受験が必要になります。また小学校は共学で、中学から男子校と女子校に分かれるといった学校もあります。

最近では、女子だけ、男子だけで高校(大学)卒業まで過すことが、平等な社会に照らして「不自然」とする声もありますが、男の子向きの教育、女の子向きの教育といったように、例えば女子校であれば礼儀作法、日本女性としての美しい立ち居振る舞いなどの教育が受けられるということで、依然人気があるということも確かです。

 

学校周囲の環境で考慮すべき点とその理由

公立小学校でも教育レベルの高い学区は一般的に比較的裕福な層の住む住宅地が多いといわれています。また国立大学や有名私立大学の系列校や付属小学校などの多く集まる、いわゆる文教地区も一般的に教育レベルは高く、そういった場所は概ね裕福な層が多く住んでいるとも言われています。

それは子供が小学校のうちから教育にお金をかけることができ、塾に通わせたり私立小学校に通わせたりすることのできる層が多く住んでいるからとも考えられますが、逆を言うとそうでないとその街には引っ越してこれないとも言えるかもしれません。そういった街は教育レベルだけではなく住環境レベルも高く、とても住みやすい街である場合がほとんどなのですが、その分、家賃等の高いエリアであることも間違いありません。

子供の教育と家庭の状況、どこを一番優先していくべきところなのか、家族でしっかりと話し合い、理想の住まいを見つけてください。

 

まとめ

今回は国立・公立・私立のそれぞれの小学校について、その特徴についてみてきました。
それぞれに様々な特徴があり、またメリットやデメリットもあると思いますが、一番大切なのはやはりそれぞれの家庭にあった学校を選ぶということではないでしょうか?

ただ単に「評判がいいから」「進学率の高い中高一貫校に優先的に入れるから」などの理由だけではなく、教育理念や教育方針が本当に合っているのか?などをしっかりと検討する必要もあるでしょう。

そして引っ越しが必要になった時には、早い段階での引越しというのももちろん必要ですが、街自体には憧れていたけれど「実際に住んだらお屋敷街はなじめなかった」というようなことにならないよう、学校の問題だけではなく、家族の雰囲気に合った街を選ぶことも重要な問題です。

小学校選びと住まい選び、共にしっかりと見極めることが大切です。