「引越したら家と学校が遠すぎてダメだったこと」家選びは慎重に
子どもの頃の初めての引越しで、私たち家族は町のはずれに家を建てて引越しをしました。兄はそのときすでに高校生で自転車通学でしたが、小学4年生だった私は小学校まで3.5kmの道を、毎日徒歩で通学することに!その道のりには、なかなかシビアな現実がありました。
マイホームを建てて家族で引越しをするのは本当に楽しみですよね。これからの人生の拠点となる場所ですので、だれもが慎重に考えるはずです。でもどうしても完璧な場所はないので、何かの条件を諦めなければいけないです。そのとき、あと数年の小学校だから…と子どもの学校からの距離を妥協するのは、あまりおすすめしたくありません。
当時の私に降りかかったできごとをまとめました。
寂しい道を往復する恐怖
小学生だった私は朝早く家を出なければならないのは嫌でしたが、わりとマイペースだったので、緑のたくさん生い茂る山を見たり、鯉の泳ぐ川を眺めたりしながら歩くことは楽しく、毎日そういったものを見ながら、特に危機感もなく通学していました。あの事件が起こるまでは…。
私の家に帰るまでは、学校から2km位までは何軒か家も点在し通学する子もいるのですが、そこから家まで1.5kmは住宅が全くなく、山と広い運動公園があるのみ。人の通りはなく車だけが結構通る道でした。
それは引越しから1年後位の時。夕方4時頃の帰り道でした。住宅がない寂しい道にさしかかったあたり。車を横付けして停めた男性が降りてきて、道をきかれました。そして、痴漢をされました。自分がそういう対象になるなんて考えてもいませんでした。私はとにかく驚き、怖く、声をあげることもできず、どうにか走って逃げ去りました。
家に着くまでの寂しい道。追ってきたらどうしよう。こわい。誰もいない。早く家に帰りたい・・・!家に半泣きでたどり着き、その日仕事から帰ってきた母に、そのことを言おうとしたのですが、言えませんでした。自分がそういう対象として扱われたのが自分で嫌だったこと。恥ずかしかったこと。悲しませてしまうこと。色々なことがごちゃまぜになって、何にも言えなかったのです。
結局、それから私は一人で帰らなければならない寂しい道の1.5kmは、いつも何もないことを祈るように、半泣きになりながら走って帰っていました。それは、中学卒業まで続きました。それでも、痴漢とはいわずとも変な人に追いかけられたりすることは何度かありました。
このことを、私の両親は今でも知りません。今の親は、子どもを守る、ということに非常に敏感になっていて、そういう場合は送り迎えをするのかもしれませんが、私の両親は共働きでしたし、送り迎えなんてお願いできませんでした。
引越しをする時は子どもを危険にさらすことがなるべくないよう、場所にも十分配慮して欲しいと思います。もしかしたら何かあってもあなたのお子さんも私と同じように言えないかもしれません。
友達を家に呼べない
新しい家に引越して一番うれしかったのは、初めて自分の部屋ができたことです。自分だけの部屋を自分の好きなものでいっぱいにしよう!そう興奮していたのですが、好きな部屋になればなるほど寂しくなりました。
学校から遠い、町のはずれの我が家。友達同士の家は近くても、近所には友達はいません。自分の部屋を自慢したくても、飼い始めた白猫を自慢したくても、友達を気軽に家に誘うには遠すぎました。そのため、友達の家に帰りに寄って遊ぶことはあっても、新しい家に友達を呼ぶことができなかったからです。子ども心に、なんだか寂しい気持ちでいっぱいでした。
私が友達を家に呼ばなくなったことを、きっと両親は気にしたことはないでしょう。だけど、私も鞄を置いて、私服に着替えて遊びに出かけたかった。友達が近所に住んでいて、すぐに遊びにいけるっていうことが、どんなに良いことだったのかと、引越し前の家を思い出したりしていました。
子どもにとっては、所属する環境が家と学校しかありません。学校のお友達とのコミュニケーションは大きなウエイトを占める重要な部分です。そのあたりも配慮してあげてほしい点です。
家を選ぶなら
子どもの頃に起こった出来事は、その後の考え方や人生に、大きな影響を及ぼすこともあります。私は高校生になってからも、痴漢にあった道を夜自転車で通るのが本当に嫌でした。「こんな田舎は早く出たい、都会に行きたい」とそればかり考えていたのは、もしかしてその影響もあるのかもしれません。
自分の気持ちを正直に、両親に打ち明けるのは、大人にとっては「言わなきゃわからない」かもしれませんが、子どもにとってはとても難しいものです。
家の場所は子どもの力ではどうにもなりません。親がどうにかするしかないのです。できるなら、周囲になるべくたくさん家があって、近所に同じように友達もいる場所に、家を選んでほしいと思います。